食卓美学総論 レッスンレポート 「神無月の家庭懐石と総復習」

過ごしやすい日が続き、すっかり秋の気配の札幌。食卓美学総論のレッスンが9月17日に行われました。この日のテーマは「神無月の家庭懐石と総復習」。テキストの総復習をしながら、食卓の作法について教えてもらいました。

秋らしくほおずきがお部屋に飾られていました。花器の下にあるマットの色の組み合わせがなんとも絶妙です

食卓美学総論は、月1回2年間で1クール。今回がちょうどそのひと区切りのレッスン日。これまでの総復習も兼ねた内容で、荒井三津子先生のお話はあらためて「食べる」ということについて考えさせられる内容でした。

 

最初のセッティングは縁のあるお盆に。よく見てください、はしおきは使いません。そう、はしおきについてもその歴史などが学べるのが煌道です

世の中にあふれている食に関する良い印象の言葉。たとえば「地産地消」「身土不二」「からだにいい」「天然」「植物性」など…。これらの言葉が付いていればなんでもいいと踊らされてしまいがちですが、本来の意味をきちんと知った上で食品選びをしていくことが大切であると三津子先生。正しい知識を持っていないと、最終的に家族の健康も守れなくなってしまうという話にはドキッとしました。「食の未来」について話す際、これまで否定的に見られがちだった養殖についても触れ、養殖=悪というわけではないことの解説もあり、多角的に物事を見る賢さも消費者である自分たちには必要だと痛感しました。また、「食べる」と「食う」の違い、「食事」と「餌」の違いの話は奥が深く、「人が食べる」ということの根本的な意味についてもよく理解でき、煌道の考えのベースがここにあると分かりました。一般的なテーブルコーディネートのレッスンや料理教室との違いをあらためて実感。

 

三津子先生が手掛けたテキスト。食のことを仕事にしている人はぜひ読んでほしいです

総復習ということで、これまで学んだ作法について先生から30問ほどの問題が出され、答え合わせをしながら振り返りを行いました。忘れていることもあり、あらためてテキストやプリントを読み直してみようかなと思いました。ちなみに講座で使っているテキスト「食学入門 食べるヒト・モノ・コト」は、三津子先生が大学の講義で用いるために作ったというもの。根拠のあることばかりなので、読んでいてとても納得。学術的な話も分かりやすくまとめられています。

煌道の食作法の話の中で、「一度一所作(ひとたびひとしょさ)」が大事だと三津子先生。食事の際はもちろん、日常のあらゆるシーンで1回1動作を意識することで、動きが美しく落ち着いて見えるように。つい、ガチャガチャと2つのことを一緒にしてしまいがちですが、少し意識をしながら生活をしようと思いました。そうしたら、先生のように美しい所作ができるようになれるかも…。

 

この日のおしのぎの一皿。これが煌道家庭懐石では重要なのです

そして、今回の家庭懐石は「吹き寄せ」がメイン。発酵調味研究家の筒渕信子先生が料理について解説してくれました。煌道家庭懐石のポイントとなるのが「おしのぎの一皿」。今回は、ナス味噌、長芋のスパイス漬け、わかめと長ネギの炒め物など5品が少しずつ盛られて登場。盛り付けや器の美しさ(視覚的効果)による期待感や季節感、食事を共にする人たちとのコミュニケーションから生まれる幸福感、そして消化時間のコントロールにより得られる満足感。結果的に健康にもつながるという「おしのぎの一皿」の素晴らしさを実感できるものでした。

 

吹き寄せが登場すると、歓声があがりました!

さらに、吹き寄せの大皿が登場すると、参加者からは歓声が。エビの酒炒り、サケの粕漬焼き、シイタケの生姜焼き、柿うずらなど8品が大皿に載っており、まるでお正月みたいという声もありました。信子先生いわく、「ほとんどが常備菜として使えるものばかりです。おしのぎも吹き寄せもそれほど難しいものではないのです」と。その常備菜も、手作りの発酵調味料を使ったものばがほとんど。発酵調味料を使うことで、あらゆる料理が簡単においしくできるそうです。

 

レッスン終了後、皆さんで記念撮影

今回、2年間の講座が一旦終了。最後は三津子先生からディプロマが授与されました。次月からは、食卓美学実践講座ということで、信子先生の発酵調味料を用いた調理のデモを中心に講座を行います。調味料の作り方、使い方、盛り付け、食卓コーディネートなどの実践も行うほか、もちろんお楽しみの試食もあります。これまで学んだことをさらに実践的に深めていく時間となります。初回は、10月22日(金)10時30分~13時。

また、これまで行っていた三津子先生中心の食卓美学総論は、食卓美学基礎講座という名称で11月から新しいクールがスタートします。初回は11月4日(木)10時30分~13時30分。

このほか、花塾テーブル専科、食事文化塾といった講座も用意。10月17日(日)11時~13時には、花塾テーブル専科の体験レッスン(3500円)もあります。詳しくはこちらから。

レポート/中村昭子